『転職活動で一向に内定が貰えません…』(32歳・男性)
<相談者の悩み>
こんにちは。SI企業に勤務している32歳の男です。入社当時はフィールド系のSEとして顧客先中心の業務を担当していましたが、3年前から事業企画系の部署にて、一応マーケティングに関する業務に携わっています。
昨年から転職を志し、色々と活動中です。理由としては、三十路に入ったこともあり、このあたりでより上の会社にキャリアアップしたいというのが理由です。今は求人数自体も多いですし。実際、私の周囲でも、この機に大手への転職に成功する人間が何人もいます。
ただ、すでに4社ほど選考を受けてはいるのですが、どうしても内定までたどり着けないでいます。書類選考自体は問題なく通るのですが、面接でどうしても空回りしてしまう感覚があるのです。
率直に言って、自分の能力にはそれなりに自信もあり、転職に成功した人たちを見ても、どうしても自分に問題があるようには思えないのです。
そこで、中途採用における面接のツボのようなものを、アドバイスいただきたいと思っています。
<城繁幸氏の診断>
診断:『器用貧乏な人は落とされる』
新卒採用とキャリア採用の違いとはなんでしょうか?
「年齢が違う」と書くと、「ふざけてんのか」と言われそうですが、これはあながち的外れでもないんですね。まだ若くキャリアの無い新卒(及び第二新卒)は、主にポテンシャル面で評価されますが、一定のキャリアを持つ中途採用応募者は、こなしてきたキャリアを中心に評価されるわけです。
これを面接する側から具体的に見ていきましょう。まずは新卒の場合。
「あなたはどういう学生生活を送ってきましたか?」
「どういう夢がありますか?」
この手の質問は、相手がどういった能力を持ちえるかを推し量るための取っ掛かりみたいなものですね。当然、学生もあの手この手のエピソードや魅力的な活動をベースに、面接官の心に引っかかるような話を展開するわけです。当然、話の範囲はとても幅広いものとなります。
一方、これがキャリア採用の場合。
「あなたの職歴を教えてください」
「これまで担当したプロジェクトでの成果は?」
なんて具合に、新卒と比べると実に具体的かつ狭い話に終始するはずです。求めるものが具体的なので、これは当然でしょう。
近年は新卒採用においても、職種別採用等、かなり絞り込んだ採用が行われるようになってはいますが、それでも依然として、両者の選考スタイルには彼我の差があるのが現実です。
一般的に、優秀なのになかなか転職に成功しない人には、このスタンスの違いに上手く対応できていない人が多いですね。具体的に言うと、面接で常に「あれもできます、これなんかもやれそうです」と、キャリアの幅広さばかりをアピールする傾向があるのです。
採る方としては、そういう人の面接をすると「結局、この人は何がやりたいんだろう」と不安になるものです。
処方箋:『必要とされるのはプロフェッショナル』
『七人の侍』という映画があります。世界の黒澤こと、黒澤明監督の代表作ですね。
映画の序盤に、街で行き交う浪人たちをスカウトするシーンがあります。浪人たちは皆、剣や飛び道具、兵法など、何か一芸に秀でた曲者揃い。あくは強そうですが、ここ一番で頼りになりそうな連中ばかりです。もしその時、「拙者は槍も剣も鉄砲も人並にはやれますよ」という人がいたらどうでしょう。少なくとも予算に上限がある場合、積極的にはスカウトされないはずです。どんなに多芸でも、体は一つしかないのですから。キャリア採用も同じことですね。
まずは、貴殿がどういうキャリアを構築したいのかをよく整理し、その上で希望する業務やプロジェクトについて、率直に語ってみてください。おそらく、これまでの面接では、新卒採用の時と同じ感覚で、自己の幅広さを中心にピーアールされていたはずです。その部分をチェックし、それに応じて職務履歴の書き方も工夫することで、問題は解決されるでしょう。
転職においては、あくまで企業も個人も対等だと考えて面接に臨んでください。それがプロフェッショナルへの第一歩です。
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